観客から見る競技ゲーマーと物語

ぷよぷよチャンピオンシップの配信を観た。これはぷよぷよシリーズJeSU認定タイトルになってから初めてのプロ大会で、優勝賞金は100万円。SEGAは今後も優勝賞金25万円のプロ大会を隔月で行いつつ不定期により高額な賞金のある大会を開催する予定らしい。

 

使用ソフトはPS4ぷよぷよテトリス、モードはVS。ぷよぷよの対戦で主流の所謂通ルールでの大会で、試合は2本先取を1セットとするBO3形式。決勝はもう少し長くなる形式にするだろうと思ったら、なんの説明もなく始まって変わりなく2セット先取で決着してしまったので少し驚いた。

 

この2先BO3、少しぷよぷよをやったことのある人ならわかると思うがあまりに短く不安定な試合形式。ぷよコミュニティでは上級者同士の格付けを行う場合50〜100本先取が一般的とされており、4本連続で取られるだけで即敗退というのはかなり厳しい。実際配信のチャット欄では『決勝50先にしろ』だとか『もっと見たい』だとか一般的なコミュニティの様式に則った試合形式を望む声も多く見られた。

 

SEGAがこの不安定な形式を選んだ理由は何か。これは恐らく優勝者の幅を広げたいという狙いだと思う。今後定期的に開催されるプロ大会において同じプレイヤーが勝ち続けることを避けるための2先BO3。公認大会の結果に応じたランキング制度の導入も告知されており、長期的なプレイヤーの格付けはそれで行い、定期大会では誰にでもワンチャンあるという環境を作りたい。そういう思惑を感じる設定。上手く動作するならより多くのプレイヤーにストーリーが生まれ、それぞれにスポットライトが当たる良い施策になるのでないかと思う。

 

これまでのメーカーが行うゲーム大会というのはあくまで販促であって、今回のプロ大会もその色を強く残したものであることは否めないが、これまで何度か行われたSEGA主催のものと比べると明らかに外向きな傾向が見られ、SEGA推薦のプロゲーマーたちも個々に持った物語も考慮した上で選出したような印象がある。これは興行としての大会も意識したものだと勝手に思っていて、私のような非プレイヤーの観客がわかりやすく熱くなるためにはプレイヤーの持つ背景が、感情が、物語が何より大事だから。

 

例えば、野球には興味がないが高校野球は観るという人がいる。何を楽しんでいるのか。高校球児という分かりやすい背景を持ったプレイヤー≒チーム同士の対戦が持つ物語性を楽しんでいる。野球はやらないが最低限のルールとセオリーはわかる。興行にはそういった観客が必要で、母数が増えることによって興味を持つ人も増える。そういった循環をビデオゲームにおいても起こせるはず。

 

今回の大会で有名ゲーム実況配信者のもこうさんが敗退した途端配信の視聴者数がガクッと減るということが起きていた。これはもこうさんの持つ背景を知ってもこうさんを見に来たという人がいるということを示していて、多くの人が関心を寄せる物語によって確実に母数は増えるということでもある。

 

今までの有志公式問わずプレイヤーのため販促のための大会や連戦にも物語は必ずあった。しかしそれをどれだけの観客が汲み取っただろうか。意欲的な人間にしか見つけられない、若しくはそもそも手の届くところに無いということは多々あったはずだ。それこそが問題で、もっと広い範囲に、こんなにアツいシーンがあるんだという事を知らしめるためにはと考えたとき、広く世間に伝えられる人や仕組みが必要になってくる。この伝える行為にはSNS等で行われる動的なものとしっかり検索性の良いログが残る静的なもの2種類に大別でき、静的なものに関しては上手い人がかなり少ない印象がある。昨今のインターネットは流れないものの方が少なく、環境の問題ではあるかもしれないが。

 

今回の大会で4位に入賞されたプロプレイヤーりべさん(id:livedesu)はこの辺の問題も意識したブログを書かれていて、この記事を書くにあたってかなり影響を受けたのでリンクを貼る。

 

livedesu.hatenablog.com

 

今回の大会配信を見ていて感じたのが、進行の方々にアツさがいまいち伝わっておらず、明らかに観客やプレイヤーと違う方向を向いている場面があったということで、実況解説の方と喋る内容が噛み合わないという場面がちらほら。すぐに付いていけるようにするという意味でもアクセスしやすい静的な情報というのは大事。

 

実況解説は代わる代わるプロプレイヤーの方々が担当していて、ある人は進行役の発言に割り込むような形で自分の伝えたいことをしっかりと喋っていたり、ある人は普段通りの伝えたい対象がブレない実況をしていたり、上手い方は本当に上手くてすごい。6月の大会も配信されるらしいのでアツい実況と試合を期待。みなさんも観ましょう。

 

大会が近づいたらおそらくTwitterで告知が出たりすると思うのでフォローしておきましょう。

 

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