情念なんてない

情念なんてない。情念なんてものは生きている人間にしか備わらない。言いたいことなんてない。友達がいない。

俺はお前らの生活なんかに興味ないんだよ。5つに区切られた監視カメラの映像が順ぐりに、くだらない生活の一部を映し出し、俺はそれに許可を与える。客は手間取ったり、メーターを見つめたり、油種を間違えてインターホンを押したり、様々な方法で俺に人生を主張して、嫌がらせをする。

まるで生きているみたいに、服を着て車に乗り、暮らしているような素振りで、その実全部嘘なんだろうと訝しむ。お前らのやってることは全部デタラメで、欺瞞で、軽薄で、虚構で、消えてなくなれと叫びそうにもなる。許可しなければならない。水がコンクリートに染みを作る。

清廉を志向することはほとんど犯罪なのだから、そうと言ってくれればいいんだ。世界にはただ、そういう誠実さだけが無い。